虹の親の楽得ライフ

FP2級のにじ父と元保険会社社員のにじ母がマイルやポイントサイト、日常のお得なことなどを色々と探求・実践している様子を報告していくブログです

地震・台風・津波 自然災害が多発する日本 だからこそ読んでおきたい高嶋哲夫の「災害三部作」+α

f:id:nijihaha:20181005231221j:plain

にじ父です。

関空を襲った台風21号、記録的暴風の台風24号、北海道胆振東部地震の記憶も新しいところですが、今後こうした巨大台風は増えていくのでしょうし、地震は各所で続発している気がします。

こんな時代におすすめしたいのが高嶋哲夫氏のクライシス小説。災害があった都度、読み返しています。(図書館で借りているだけなので、文庫版くらい買って持っておくべきかなと思ってもいます。) 

人間の力ではいかんともしがたい自然災害の怖さと、そんな災害に負けまいと奮闘する人間の強さも示唆してくれる、先見性に富んだ物語の数々です。

来るべき大災害に備えて一読しておくと、多少の心構えができるのではないかと思います。

作家・高嶋哲夫とは

1949年岡山県玉野市生まれで、慶應義塾大学工学部卒業後、同大学院修士課程へ。在学中に通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行われていました。大学院修了後は日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の研究員となられ、1977年にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学されていました。
1979年に日本原子力学会技術賞を受賞したほどの経歴ですが、1981年に帰国後は学習塾を経営される傍ら創作活動をされ、1990年に『帰国』で第24回北日本文学賞を受賞。
その後は1994年『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞されています。
現在は作家以外にも学習塾協同組合理事、原子力研究開発機構の外部広報委員長を務められています。

経歴からもおわかりのとおり、原子力発電所に関する小説は当然素晴らしいのですが、自然災害に関する小説もとても綿密な取材に基づいて書かれています。

私は『M8』という小説を読んで、なぜ阪神淡路大震災についてこれほどリアルな描写ができるのかと思っていましたが、震災発生から数日後に神戸にいる友人の元に向かわれ、長田地区が焼け野原になった様子や、三宮の大きなビルが倒壊しているのを目の当たりにしたことが大きかったそうです。 

このあたりは講談社の現代ビジネスの「作家・高嶋哲夫さんの「わが人生最高の10冊」」や、建設コンサルタンツ協会誌255号「復興~過去の災害を乗り越えて~」に寄せられたメッセージ「未来に向けてもっとも大切なこと」にご本人の言葉で書かれていますので、そちらをご覧いただくとよいかと思います。 

こちらは東日本大震災に関して寄せられたメッセージです。 

建設コンサルタンツ協会誌255号「復興~過去の災害を乗り越えて~」

 

高嶋哲夫の「災害三部作」

さてそれでは読んでおくべき「災害三部作」をご紹介します。

①『M8』(2004年8月 集英社)

f:id:nijihaha:20181005230604j:plain

こちらはM8(マグニチュード8)が示す通り、地震の話です。

高校時代に阪神大震災で家族を失ったポストドクター瀬戸口がコンピューターシミュレーションにより首都直下地震が間近に迫っていることを知り、何とか危険性を国民に知らせようとするのですが、その声はなかなか届かないままついにXデーが間近に迫って…。
※ちなみにポストドクターとは博士課程修了後の研究者、端的に言えば非正規の任期付き研究者のことです。博士研究員とも呼ばれます。

この小説の主人公瀬戸口の活躍のピークはやはり地震発生前までという感じですが、むしろ読んでいただきたいのは震災発生後の都内の被災の様子と、消防や自衛隊の活動部分です。

なお、瀬戸口の同級生の松浦や河本、かつての地震学の権威である遠山、国会議員の堂島、都知事の漆山などは、今後他の本にも出てくる人物なので、時系列に沿ってこの本から読まれる方が、より感情移入して楽しめることと思います。

②『ジェミニの方舟 東京大洪水』(2008年7月 集英社)

f:id:nijihaha:20181005230608j:plain

出版年は③『TSUNAMI』の後ですが、時系列的にはこちらが①『M8』の次となります。

荒川の近くで生まれ育った玉城は「日本防災研究センター」に出向中の気象学者。かつて台風による河川の氾濫で父親を亡くしており、台風による被害を減らそうと研究に努めています。

そんな彼のしたためた「荒川防災研究」が話題となるなか、二つの台風が合体して超巨大台風になり首都圏を襲うおそれがあることを突き止めるも、気象庁の見解とは違い…。

実際に二つの台風が干渉することがあるそうです。これを「藤原の効果」と言うそうで、台風が1,000キロ以内に接近した際に、①それぞれの台風が同程度の勢力で接近した場合には、中間点にあたる部分を中心に回転運動をする、②台風の勢力が違う場合には、弱い方の台風が強い方の台風に吸い寄せられ吸収される、といった影響が出るというものです。中央気象台(現気象庁)台長を務めた藤原咲平氏が1921年に提唱した理論ということです。

2013年10月に日本に同時に接近した台風27号・28号で注目され、藤原の効果を折り込んだ気象予報が出されましたが、この本は、それよりも前の2008年3月に出版されながら、この藤原の効果を記載しているということで、高嶋さんの取材、研究のすごさを改めて感じさせられます。  

この小説の中で、「降水量ゼロの月が続いたかと思えば、大雨が降りだす。8月には大量発生した台風が9月にはゼロになっているし、9月の終わりでも30度を超す日がある。」とあり、平年より台風発生率が高く、海水温度が1、2度高いため、経験したことのない超大型台風が日本に上陸する可能性があるとしているあたり、2018年の気象を思わせて不気味に感じました。

荒川氾濫による江東デルタ地帯水没、地下鉄網を通じて東京都心水没と、東京のゼロメートル地帯に住んでいる方にとっては、かなり恐ろしく感じるのではないでしょうか。

『M8』の遠山や瀬戸口、漆原のポストに少し変化が生じています。

③『TSUNAMI 津波』(2005年 集英社)

f:id:nijihaha:20181005230613j:plain

アルファベット表記がサザンオールスターズの名曲を思わせますが、この「TSUNAMI」は22万人以上の死者・行方不明者を出した2004年のスマトラ島沖地震で、世界的に知られることになった「TSUNAMI」から取られているようです。(ちなみにサザンの曲は2000年発表です。)

『M8』から6年後、瀬戸口に地震研究者として嘱望されながらも、静岡県内の市役所防災課の職員としてハザードマップ等を作成し、津波への備えを万全にする道を選んだ黒田。

名古屋を襲ったM7.8の海溝型地震で必死に津波の危険性を訴えるも、静岡に到達した津波は低く、人々は海岸でイベントを楽しむなど、耳を貸す様子はありません。

しかし先の地震は発生が懸念されていた東海地震の本震ではなく、プレートの歪みエネルギーの数パーセントを放出したものに過ぎず、その後東海、東南海、南海地震が立て続けに日本を襲います。

そして地震の共振により、30mにも及ぶ津波が太平洋沿岸の街を襲うなか、人々は津波に呑みこまれ、原子力発電所では人災が発生してメルトダウン寸前に…。

こちらの小説は多分に先見性に富んでいたというか、東日本大震災の際に「想定外」と言われた、堤防を軽く超えてくる津波や、想定震源域にある原発の危険性などが、かなりの部分予測されていました。

この小説を上梓された後に高嶋さんが政府の地震調査委員会等に名を連ねることがあれば、東日本大震災の被害の一部でも防げたのではと思わせられました。 

津波に呑みこまれることは「泥水の洗濯機にハンマーやナイフと一緒に放り込まれたよう」「死因のほとんどは溺死ではなく、打撲によるもの」という表現は、津波の恐ろしさを物語っています。平地で遠くへ逃げるよりも、建物の高層部に逃げるよりも、とにかく高い土地に避難すべきだと感じました。

地震の予知よりも、巨大地震は周期的に必ず発生するものとして、「常に備える」必要性を痛感させられる作品です。 

 

まとめ

お堅い学術論文ではないので、災害の怖さを知ることや心構えのためにも読んでいて損はない本だと思います。

他にも「都庁爆破!」というテロリストが東京都庁を占拠する話も面白いです。

また、高嶋哲夫氏の作品は災害に襲われても、そこから日本は立ち直っていくというお話ですが、対極的な作品として小松左京氏の「日本沈没」では完全な日本の消失を、「日本沈没 第二部」では世界に散らばった日本人の生き様を描いていて、こちらも大変面白いお話で、おすすめです。